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彼女こと、リザ──後に名を馳せる存在──は僕に呼び出されてから宣告を受けまでの間終始うつむき、顔を上げて
「学園を……辞めます……、だから私の友だちは手を退いて……」
と目を真っ赤に、頬も赤く染めて涙を流して嗚咽(おえつ)混じりに、リザはハッキリ言った。
泣かれることは予想外ではなかったので、何も言わずハンカチを取り出して彼女に差し出す。
あまり好きな柄ではないが、貴族という身分上やたら良質な物が手に入る。しかも、不必要で保存されてる物もあるくらい大量に、だ。
受け取らないだろうとか、はたき落とされる可能性まで予想していたが、リザは素直に受け取り目に当てて拭っていく。
僕は力が無いことの悔しさを理解できないほど鈍くはない。
むしろ、「出来の悪い息子」の烙印を押された存在で、「落ちこぼれ」のリザと大して変わらない。
弱い存在をいたぶる歪んだ関係から広げた人脈と、
悪いことを一緒にしている連帯感が繋がりを強め、
その責任者(リーダー)として自ら生け贄に立候補したのが、僕だ。
決して誇れる立場ではないし、やってることは社会の最底辺とまったく変わらないクズだ。
これが、力の無い僕が選んだ最低な生き方だ。
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