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「DNAプロダクション社長室」
僕は、もう一度お辞儀をした。
申し訳なさと「四年間ありがとうございました」小さく、感謝の言葉を言って
「どうだったの、社長との話しは?」
仕事場の方へと戻り、荷物の整理をしていると、声がかかった。
「まぁ、一応認めてはもらいました。しぶしぶでしたけど」
「でしょうね、君みたいな真面目で有能な社員をてばなしたくはないもの」
「そういう薮下さんだって、事務所の超売れっ子プロデューサーじゃないですか」
僕に語りかけてきた人物。
藪下幸恵、僕の先輩である。
額が見えるように髪をピンで左側に止め、身長は平均的な僕より少し低い女性である。端から見ても美しいとお世辞抜きでも言えるほどの人が、何故プロデューサーをやっているのか最初は不思議で仕方なかった。
「けど、あなたがいなくなって困るのは社長だけじゃないわ…」
口角を上げ、微笑を浮かべていた顔が急に陰りを見せた。
「わたしも…寂しいんだから…」始まった…
「藪下さん、如何にも恋人らしいシチューエーションと表情で言っていますが、僕とあなたには先輩後輩の関係しかありませんから」「何よ、ノリが悪いわね」
「ノリが悪くて結構です」
つまらない顔をしている藪下さんに、当然のごとく言った。はぁ、勝手に話を捏造しないでほしい。「まぁ、こんな風に絡めなくなるのは寂しいわね正直言って」
「僕としてはありがたいですけど」心の中でそう思っておこう。
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