No.1「それぞれの出会い、そして想い」其の壱

2/4
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
「DNAプロダクション社長室」 僕は、もう一度お辞儀をした。 申し訳なさと「四年間ありがとうございました」小さく、感謝の言葉を言って 「どうだったの、社長との話しは?」 仕事場の方へと戻り、荷物の整理をしていると、声がかかった。 「まぁ、一応認めてはもらいました。しぶしぶでしたけど」 「でしょうね、君みたいな真面目で有能な社員をてばなしたくはないもの」 「そういう薮下さんだって、事務所の超売れっ子プロデューサーじゃないですか」 僕に語りかけてきた人物。 藪下幸恵、僕の先輩である。 額が見えるように髪をピンで左側に止め、身長は平均的な僕より少し低い女性である。端から見ても美しいとお世辞抜きでも言えるほどの人が、何故プロデューサーをやっているのか最初は不思議で仕方なかった。 「けど、あなたがいなくなって困るのは社長だけじゃないわ…」 口角を上げ、微笑を浮かべていた顔が急に陰りを見せた。 「わたしも…寂しいんだから…」始まった… 「藪下さん、如何にも恋人らしいシチューエーションと表情で言っていますが、僕とあなたには先輩後輩の関係しかありませんから」「何よ、ノリが悪いわね」 「ノリが悪くて結構です」 つまらない顔をしている藪下さんに、当然のごとく言った。はぁ、勝手に話を捏造しないでほしい。「まぁ、こんな風に絡めなくなるのは寂しいわね正直言って」 「僕としてはありがたいですけど」心の中でそう思っておこう。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!