プロローグ

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 薄暗いトンネルは寒くてじめじめとしていて、どこまでも果てしなく続いているようだった。  今にも泣き出しそうな様子で、酒井亮太はしぶしぶ歩いている。「なんか臭うよ、ここ。それにお腹空いたよ」  無理もない。亮太はまだ7歳児の体力しかないのだから。   ロストチルドレン法が施行されて10年が経過し、日本の人口情勢は大きく変化した。現在の日本の人口情勢は、10歳から19歳までの人口がゼロである。  それは必然的に、凶悪化していた未成年者の犯罪発生率が0%になったことを意味していた。  僕の場合は9歳で成長を止められた。だけど僕の心と身体は、19年間もの時を、明らかに生きてきたんだ。  だが、肉体の成長を制御され、時を止められた「永遠の子供たち」は、いつ大人になることを許されるのだろうか。
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