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僕たちは歩いた。何度も何度も転びながら。ただ真っ直ぐに延びる、薄暗いトンネルの中を。僕は亮太の右手を掴んでいる左手にぎゅっと力をこめた。
「亮太、もうすぐだから。きっともうすぐだから」
心なしか瞳を潤ませながら、亮太の右手が僕の手のひらを強く握り返してきた。
「うん」
亮太も理解と決心はできているのだ。
このトンネルの先には、僕たちの未来がある。科学の力によって成長することを奪われてしまった、僕たちの新しい未来が。
不意に、強い風が僕たちの後ろから吹きつけてきた。僕は思わず前のめりになりながら、その場に座り込んだ。
それで初めて気付いた。
僕たちの前から道がなくなっていることに。
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