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カチ、カチ、カチ、カチ、――
静寂――響くのは、時計の針の音と本を捲る音しかない。
壁にかかった大きな柱時計は、その古めかしさもセンスの一つとして際立たせている。薄くぼやけた橙の光に照らされて、不可思議な郷愁を漂わせるそれを、一人の少女が見上げていた。
白い肌の、黒い少女だ。西洋人形を思わせる黒いドレスは、アゲハ蝶のように重々しく、優雅で、異彩だった。和人形を思わせる流れる髪は、濡れたように黒く、春先に吹くそよ風のように柔らかく波打っている。そんな黒に包まれた肌は、陶磁器のように割れそうな儚い白さで、少女の病弱さを見せつけている。そのあまりの白さで、チークも塗っておらず、照れてもいない少女の頬は、薄紅色を浮かべている。
カチ、カチ、カチ、カチ、――
時計の針は、まだ続いている。その柱時計は振り子を規則正しく振って、その歯車が軋む音を静かな部屋に満たしていた。
その様を、黒い少女はただ見つめ続ける。
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