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黒い少女が小首を傾げて鳴る衣擦れの音や、その可愛らしく揺れる腰の飾りリボンと黒髪に意識を向けながら、白い少女は待っている。左手に抱えた本も、今は膝の上に置かれていた。
「世の中って、人と人の繋がりでできているんでしょ?」
やっと、頼りないソプラノが紡がれた。その音律はハンドベルの余韻のように震えていて、その旋律は時計のそれとは程遠くたどたどしい。それでも、懸命に自分の想いを伝えようとする黒い少女に、白い少女は真摯に向き合っていた。
「ええ、そうね」
白い少女が小さく頷くのに揃って、亜麻色の髪がさらり、と確かな音を立てる。
それを聞いて、黒い少女はその翡翠の瞳を彷徨わせながら続ける。
「それって、機械の歯車みたいでしょ? みんながやるべきことをやって、社会が進む。歯車がお互いを絡ませて、時計の針が進む。やることははっきりしてて、それをやればいい。わたしもみんなと同じなら、そうやって誰かの役に立てるのに、って思ったの」
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