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カチ、カチ、カタ、カチ、――
黒い少女が、急かされるように語り終えた。
白い少女が、左手だけで、小気味いい音を鳴らして本を閉じた。
「こんな小難しい本ばっかり読んでるから、そんなこというのね」
強いアルトが、少しの憤りを含んで部屋に響き渡る。きつく結ばれた薄く桃色に色づいた唇が白い少女の怒りと哀しみを代弁している。
「そんなの、つまらないじゃない。他人と同じなら、あなたじゃなくていいもの」
屹然と、白い少女は告げる。黒い少女が、病気のせいでこの部屋からほとんど出られないことも、そのために白い少女や両親に迷惑をかけていると嘆いていることも、そんな弱い自分が嫌いであることも知ってなお、一蹴した。
そして、白い少女はその桃色に色づいた唇を、薄紅色に染まる黒い少女の頬に押し当てた。突然の愛撫に、戸惑ったソプラノが調律もされずに、幾つも奏でられた。
「あなたじゃなきゃ、ダメなの。あなたらしく、生きてほしいの。そんな、機械の心なんて、イヤよ」
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