1人が本棚に入れています
本棚に追加
この高い丘から眺める景色は心を掻き回されてるような気になる。
何故か、切なくなる。
それもこれも、何ヵ月か前に見た少女の影響だろう、少女はただならぬ雰囲気だった。
不思議と苦しそうなのに表情にはあまり出てなかった。
…やらなければいいのに、声をかけてしまった。
少女はハッとするわけでもなく、ただ薄く笑っていた。
【待っているの】
そう言ってはこの場を立ち去ったのだ。
これはもう困惑せずには居られないだろう。
少女を忘れられない自分がいるのにはほとほと呆れる。
今まで周りに興味などなかったのに…
それから飽きることなく毎日ここに来てる。
少女は、確かにここの風景を眺めていたのだ。
待っていた、何かをこの場所で…。
来ることは叶わなかったのだろうか。
「また、会ったね」
小さな声だが確かに耳に届いた。
自分の心臓が高鳴る。
後ろを向けばそこに居た。
「…待っているものは来た?」
少女は首を傾げて、ううんと言った。
「来れなくなっちゃったらしいの」
だから、帰ってしまったのだろうか。
相変わらず、彼女は表情に変化があまり見られない。
彼女は話を続けた。
「私はここが大好き、でも変わっちゃった…そして、私が大好きなものはどんどん失われていった。何年もたったら当然のように変わっちゃった。でも、私はここが……」
ふっと顔の表情が少し曇った気がした。
変わっていくものが奪い去る。
「…作ろう、また再生させよう」
まだ終わっちゃいない。
「え…?」
「これから、また作ればいい好きになればいい。変わっても変わらなくても関係ない忘れられなくても忘れても、これからがある限りは作れる、好きになれる」
愛せるだろう?
好きになれるだろう?
好みじゃなくたって…そこに諦めることの出来ないことがあれば出来る。
「……あなたは…」
少女は初めて泣きそうな顔をした。
そして、久しぶりの涙を流したのだ。
「あぁ、輪廻…繰り返しだね」
嬉しそうに笑い、静かに泣いた。
「一緒に歩ませて」
少女は、憂いない涙でそう言った。
確かにそれを頷いて答えた。
最初のコメントを投稿しよう!