プロローグ 探偵アリス編

2/5
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/396ページ
 夏休み目前の、ある日のこと。  ミステリー研究部の部室で読書をしていると、扉が勢いよく開かれた。  驚いて顔を上げると、正面の席に座る十六夜怜[いざよいれん]さんと目が合った。   「お、レンちゃんもワトスン君も、二人とも居るね!丁度良かった!」  やって来たのは、ミス研部長であり、藍空[あいそら]アリス先輩。シャーロック・ホームズを敬愛する、シャーロキアンなミステリマニアだ。    ちなみに今この部屋に居るのは僕とレンさんだけ。そして僕の名前はホームズの相棒と同名のワトスン、なんてことはない。  それなのに何度言っても、ワトスンとしか呼んでくれない。まあ、いいけど。   「何かありましたか?」  レンさんがアリス先輩に聞く。 「うん、実はさ。二人とも夏休みの8月頃ってどうしてる?実家に帰ったりする?」    僕らの通っている雨洗美[あまらび]高校には寮があり、殆どの生徒は寮で生活している。各地からやってきている生徒も居るので、長期休暇には帰省する生徒も多い。   「いえ、僕は別に」 「私も8月ならばこちらに居るはずです」 「それは良かった!実は、こんなの貰っちゃってさ」  先輩が掲げて僕らに見せたのは、チケットのようだった。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!