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夏休み目前の、ある日のこと。
ミステリー研究部の部室で読書をしていると、扉が勢いよく開かれた。
驚いて顔を上げると、正面の席に座る十六夜怜[いざよいれん]さんと目が合った。
「お、レンちゃんもワトスン君も、二人とも居るね!丁度良かった!」
やって来たのは、ミス研部長であり、藍空[あいそら]アリス先輩。シャーロック・ホームズを敬愛する、シャーロキアンなミステリマニアだ。
ちなみに今この部屋に居るのは僕とレンさんだけ。そして僕の名前はホームズの相棒と同名のワトスン、なんてことはない。
それなのに何度言っても、ワトスンとしか呼んでくれない。まあ、いいけど。
「何かありましたか?」
レンさんがアリス先輩に聞く。
「うん、実はさ。二人とも夏休みの8月頃ってどうしてる?実家に帰ったりする?」
僕らの通っている雨洗美[あまらび]高校には寮があり、殆どの生徒は寮で生活している。各地からやってきている生徒も居るので、長期休暇には帰省する生徒も多い。
「いえ、僕は別に」
「私も8月ならばこちらに居るはずです」
「それは良かった!実は、こんなの貰っちゃってさ」
先輩が掲げて僕らに見せたのは、チケットのようだった。
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