33人が本棚に入れています
本棚に追加
長夜にけぶる雨月
泡沫の夢はもう潰えた
冷めた光にうらぶれた背を見せ
街路樹横目に独り歩く
独り善がりのロマンは
さぞ滑稽な猿の餌だったろう
踏みつけたアスファルトからは
命の涸れた匂いがする
肩から下げたポートフォリオ
くたびれた中身はからっぽさ
滴る雫も避けずに
ふらふら ふらふら
ショーウィンドウに映る亡霊
夜の帷が希望を飲み干して
星の残骸の雨が勢いを増す
洗い流されて残ったのは
独りぼっちのつまらない現実
口寂しさに襲われて
火のない煙草と缶珈琲
ふやけたフィルターは
まるで人生そのもの
散らばった夢の破片は
何処かの夜空の幾筋の光芒だと
そう思い直して
濡れたコートの襟を立てる
見えない月が微笑んだ気がした
最初のコメントを投稿しよう!