愁月プロムナード

2/2
前へ
/40ページ
次へ
長夜にけぶる雨月 泡沫の夢はもう潰えた 冷めた光にうらぶれた背を見せ 街路樹横目に独り歩く 独り善がりのロマンは さぞ滑稽な猿の餌だったろう 踏みつけたアスファルトからは 命の涸れた匂いがする 肩から下げたポートフォリオ くたびれた中身はからっぽさ 滴る雫も避けずに ふらふら ふらふら ショーウィンドウに映る亡霊 夜の帷が希望を飲み干して 星の残骸の雨が勢いを増す 洗い流されて残ったのは 独りぼっちのつまらない現実 口寂しさに襲われて 火のない煙草と缶珈琲 ふやけたフィルターは まるで人生そのもの 散らばった夢の破片は 何処かの夜空の幾筋の光芒だと そう思い直して 濡れたコートの襟を立てる 見えない月が微笑んだ気がした
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加