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カーテンとドアに区切られた
夜だけ現れる小さな宇宙で
赤い制服に真っ黒帽子
イチニ イチニ 兵隊の行進
シンバル打ち鳴らす楽器隊に
たまごサイズの兵士たち
列の最後尾に記憶の鍵をくくりつけ
僕の膝の上にぽろぽろ落としてゆく
どうか思い出させないで欲しい
壊れたおもちゃ達を大切にとっておくように
解れたぬいぐるみを丁寧にまつり直すように
くすぶった想いも後生大事に抱えていれば
いつか宝物へ昇華すると思っていた
このベッドには、あの頃の僕がまだ
ミニカーかかえて座り込んだまま
コンポから流れる音楽はどこかが欠けている
iPodに絡まったイヤホンを
少しずつ少しずつ巻き戻していく間に
七色の煙をはき出す機関車模型は
恥ずかしい過去の回想列車へと変貌
どうか錠を開けないで欲しい
それはひと筋流れた結露のように
まるで春と見まごう樹氷のように
つめたく冷えて形作られ
触れればすぐ崩れるほど脆いから
鍵はぴたりと嵌まるのだろうけど
こじ開けて補充するくらいなら
僕は欠陥を持ったままでいい
そう宣言してようやく眠りにつく
壊れたおもちゃは動かなくなった
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