忽然と紋白蝶

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山を歩いていると、空が不意に空腹を訴えた。 ほっておいたら泣いたり怒ったりうるさいので、とりあえず大きな木の下へ避難した。 その木は変な形をしていて、おまけに大きなうろまであった。そのうろの中に入るには若干の躊躇いを伴ったが、爆発的怒髪天の様相を呈している空は見るに耐えなかったので、結局中へ入ってしまった。 その木の変な形も中に入ってしまうと見えなかったから、僕は多少がっくりした。しかしとりあえずしばらく屈んでいた。その中で屈んでいた。 すると、突然なにかがうろの外へと飛び立った。それは白い紋白蝶で、黄色い紋白蝶や青い紋白蝶ではなかった。 きれいだな~、と凡庸な感想を抱いたのまでは覚えているが、僕はその直後に意識を失ったので、白い紋白蝶がその後どうなったか、その変な形の木がどうなったかは知らない。
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