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まるで蜘蛛の子でも散らしたかのように、生徒たちが廊下を駆け巡る。
誰も彼も鬼気迫る面持ちで。
それも仕方ない。
それも仕方ない。
彼の英雄様が負傷してしまったのだから。
公衆の面前で。
何の抵抗もできずに。
この俺の手で。
この学院の制服を着た男はほくそ笑みながら、混乱に乗じて逃走を図る。
これだけ人が逃げ回っていれば、学院から出ようとしても何ら不思議なことではない。
木を隠すのなら森の中というやつだ。
まさに完璧な計画だ。
だが一つ、誤算があった。
確実に仕留めきれるはずだったディオネが、思いの外軽傷だったことだ。
あの爆弾の威力なら、人間一人肉片にするには余りある威力があった。
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