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ディオネの暗殺騒動から数日たった。
些かの動揺が残るものの学業は平常通り行われている。
だから朝早くからこうして制服に着替えなければならない。
例えここ数日全く寝ていなくとも。
鏡で服装を隈なくチェック。気がかりは目の下の隈だけ。
艶のある黒髪はいつものように逆立ち、切れ長の目は鋭利な印象を彼に与える。
さらに端整な顔立ちがより一層彼を冷たく仕上げる。
さて朝食の準備にでも取り掛かろうとしたとき、不意にチャイムが鳴った。
こんな朝早く、といっても七時だが、押しかけてくる人に心当たりが一人。
入学式で出会って以来こうして毎朝押しかけてくる。全く、人の迷惑というものが頭から欠落しているのだろう。
ドアを開けると、すこし頬を赤らめた可愛らし少女がいた。
名前はアリサ。どこぞの貴族らしい。
「お、おはようございます。ゼクスさん」
「ああ、おはよう」
「……大丈夫ですか? あまり寝ていないようですが」
「大丈夫だ。鞄を取ってくるから少し待っててくれ」
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