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プロローグ
「太田亜紀子が自殺を図って入院している」
取材旅行から戻ってみると、留守番電話の最後のメッセージにそう吹き込まれていた。
伝言の内容から、亜紀子は今度もまた、私が取材を続けている救命救急センターに搬送されたのだということが理解できた。
知らせてくれたのは、その医療機関の医師である。
すっかり空は暗くなってしまっていたが、私はクルマを飛ばして亜紀子が入院している救命救急センターへと向かっている。
東京からクルマで数時間。
私が病室に駆けつけた時、すでに時間は夜の11時を過ぎていた。
消灯時間を過ぎた高次医療病棟の患者は、ほとんどが眠りについている。
前日、人工呼吸器が外れるまでに回復した亜紀子も、この日、集中治療室から高次医療病棟に移ってきていて、窓際のベッドで眠っていた。
身体を左に向けて静かに眠る彼女は、少し暑いのか掛布団から右足を出し、右手は頬を覆うようにして、やはり布団から出している。
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