プロローグ

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私の目に映るその細い腕や足首は、32キロにまで痩せたという彼女の体重を納得させていた。 顔見知りの看護婦が、「この子、こんなに痩せてたっけ?」と私に話しかける。 亜紀子の病気を知らない看護婦たちは、1年半前に入院していた頃の彼女の姿と思い較べ、あまりの体重変化に驚いていたのだ。 「えっ……ああ、そうだね」 自殺未遂の理由はわかっていたが、それでも、また、こんなことをしてしまった亜紀子の顔を茫然と見つめていた私は、答になっていない答を看護婦に返していた。 1990年12月25日、この日の深夜0時頃、亜紀子の母親、俊子は「もう寝る」といって自室に戻った亜紀子を確認している。 ところが1時間ほどすると、もう寝たはずの亜紀子が台所に戻ってきた。 「ケーキ食べていいかな?」 亜紀子は、半分ほど残っていたクリスマスケーキを指して、俊子に訊いている。 「うん、いいよ」 そう答えた俊子には、亜紀子に特に変わった様子があるようには見えなかったし、ケーキを食べながら彼女がおかしなことを口走っているとも思えなかった。 しかし俊子は、ケーキを食べ終えて部屋に戻った亜紀子の様子を見に行っている。 就寝前に亜紀子の部屋を覗くのが、この頃の俊子の習慣になっていたからだ。 そこで俊子は、部屋の中に散らばっている大量の薬の容器や包装紙を見つけることになる。
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