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帰宅した妻は伸ばしていた髪を短く切ってい た。
「どうだった? ハローワーク」
行かなかった、とは云えず、そんな妻の問い に「ああ」と無気力に返事をして誤魔化した。
妻は買い物袋から取り出した食材を冷蔵庫に しゃがんで詰め込みながら、最近ふと見せる事 の多くなった寂しげな横顔を笑顔で遮った。
煙草を灰皿でもみ消し、ふと抱き締めたく なった衝動を抑え、俺はソファに寝そべった。
「お前こそ、どうだった? 病院」
妻の動きがふいに止まった。
冷蔵庫の開け放たれたドアから冷気が、俯い ている妻の顔にあたっていた。
ハラリと額に垂れた前髪がそよぎ、ゾクッと する、愁いを帯びた表情で俺をチラッと見た。
「ダメみたい・・・長くてあと半年」
「そうか・・・」
癌で倒れたとゆう、別れた元亭主に、会いに 行ってやれよ、と寛大な素振りを見せたのは俺 の方だった。
会社が潰れヒモ同然の今の俺が、そんな言 葉云える余裕がないのは妻も判っていた。
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