少女君臨

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「じゃあ、あたしこっちだから」 「うん!また明日ね、陽花っ!」 友達に手を振って、くるりと踵を返す。 中学の頃から友達の彼女は、ピアノが上手で、全国大会クラス。 今日はたまたま大きなコンクールが終わった直後だったから一緒に遊びに行けた。 けれど普段は学校が終わったらすぐに帰ってしまう。 彼女の結果は練習の成果だ。 緩やかな坂道を下って、もう家は目の前。 玄関の鍵を制服のスカートから取り出した、 その時だった。 ――汝、我らの呼び声に応えよ―― 声が聞こえて、立ち止まる。 同時に頭と耳の奥がキィンと悲鳴を上げて、あたしはとっさに悲鳴を上げた。 「いたっ!」 ――…応えよ―― まるで脳に直接語りかけてくるかのような声は、何度もそう繰り返す。 そうして数分が過ぎた。 あたしはたまらず口を開いた。 「あな、たっ…だ、れ…?」 痛みを堪えながらそう紡ぐと、声が止む。 未だにずきずきと痛む頭を右手で押さえた。 ――…我らの救世主よ、時間が無い 我らの子たちを、救ってやってくれ―― そう声が聞こえたと思った刹那、眩い光が足元から溢れ出した。 とっさに頭を押さえていた手を移動させて目を覆う。 そして恐る恐る目線を下に持って行くと、信じられない物を見た。 「なにこれ…!」 マンガやアニメでよく見かける、いわゆる“魔法陣”のようなものの中心に、あたしは立っていた。 その姿を確認した途端、より一層輝きが増して、目も開けられなくなる。 ――英雄になるのだ、ハルカ…―― ぎゅっと閉じた目では確認することが出来なかったけれど、その瞬間だけ目の前に声の主が立っていた気がした。 .
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