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それにしても、さっきから思ったけど、“勇者”って何だろう。
確か、ここに来る時聞こえた声は、“救世主”だって言ってた。“勇者”と“救世主”は同じなのかな?
「勇者、って何なんですか?」
あたしが疑問をそのまま口に出すと、三人はきょとんとした顔をした。
知らないのか?
サクが聞き返してくるけれど、あたしが育ってきたのは戦いもないような時代なんだから、知るはずがない。
首を横に振ると、分かりやすくため息を吐かれた。むっとして睨むと、アスランが慌てて間に入ってくる。
「勇者というのは、この世界を変えられる可能性を秘めた存在の事です。しかし本当にその力を持っているのは片手で数えられる程。力を持つ者は救世主と呼ばれ、人ならざる者たちと会話が出来るそうです。」
尤も、救世主の存在は伝承に伝えられているだけで、確認はされていませんがね。アスランはそう付け足す。
あたしを救世主と呼んだあの声は、一体何だったんだろう。首を捻っていると、サクが鼻で笑った。
「救世主なんて、居るわけねぇだろ?それに、最近の勇者だって俺達近衛隊に任せっきりで、自分は部屋から出ようともしない。ふざけんなっつーの!」
彼は眉間に皺を寄せて、吐き捨てるようにそう言った。
怒りを含んだ声音に、あたしは開こうとした口を閉じる。
「サク、ハルカ様が困っていらっしゃいますよ?」
「いいんだよ、困らせときゃあな。」
ノエルくんが窘める。
けれどサクはそっぽを向いたまま、黙ってしまった。
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