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「それで…あたしはその勇者、なの?」
あたしがそう言うと、ノエルは困惑した顔を引き締めた。
突然大人びた表情をする彼に、つい見蕩れそうになる。
けれど、結局未だにテーブルの上にいるあたしから見て、ギリギリ頭が見える位の身長である事を思い出し、頭を振った。
「はい、ハルカ様は間違い無く勇者様でございます」
キラキラと輝く瞳であたしを見る彼に、何とも言えない気持ちになる。
サクが先程ちらりと言っていたけれど、多分この世界はまだ戦争が続いている。
もし、その戦いに参加しろと言われたとしても、あたしはただの女子高生で、武器だとかそういう物は、博物館でしか見たことが無い。
あたしは、このままじゃ役には立てない。
せっかく必要とされているのに。
「…あたしは、役に立てないよ?あたしは、元居たところでは普通の、どこにでも居る学生で、戦った事なんてないし。ましてや武器だって持ったことない。」
だから、役に立てないから。俯いてそう言うと、皆の視線があたしに突き刺さった。
サクが鼻で笑う。
「それで、お前はどうしたいんだ。元居た世界へ帰してくれとでも言うつもりか?」
「それは、…………。」
サクの言う通りだった。
あたしは、この世界から逃げ出したかったのだ。
何も言えないあたしに、彼は今度はため息を吐く。
「残念だが、こちらに喚ばれた時点で、元居た世界でのお前の存在は消去されている。精々、この世界での身の振り方を考えておくんだな」
嘲笑うようにそう言ったサクは、そのまま扉へと歩き出す。
アスランとノエルが彼の名を呼ぶけれど、彼はそれを無視して、出て行ってしまった。
突き付けられた非現実的な現実に、目の前が真っ暗になった。
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