少女君臨

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「どうして…っ、どうしてあたしなの!」 やるせない気持ちが、黒い何かと結合して溢れ出してくる。 あたしは何もしてない。 なのにどうして、望んでもないのにこんな世界に喚ばれたの? あたしは、こんな世界が滅びようが関係無かったし、どうだって良かったのに。 なのにどうして。 「申し訳ありません、ハルカ様。」 「謝ってほしいわけじゃない!」 ノエルを睨みつけると、小さな体がびくりと竦む。 流石にやりすぎたと謝ろうとしても、口が思うように動かなかった。 「今回の勇者は失敗ね。」 目の前の二人とは違う声に、慌てて視線をそちらに移す。 サクが先程出て行った扉に、女の人がもたれ掛かりながら立っていた。 炎のように真っ赤なショートヘアが印象的だ。 「あなたは?」 「少しはマトモな奴が来ればと思っていたけれど、やっぱり勇者なんて愚か者ばかりね」 あたしを見て、鼻で笑う。 だって、あたしは悪くないのに。 どうして愚かだなんて言われなきゃならないんだろう。 「っ、質問に答えて!」 「私はフラン。サクの部下よ、勇者様。」 射抜かれそうに感じる鋭い視線から逃れるように俯いた。 唇を思いっきり噛む。 口の中にリップクリームの何とも言えない味が広がった。 「じゃあ、どうしろって言うんですか?戦えって言うんですか?」 「ええ。」 あっさりと言われ、虚を突かれた。 フランの瞳は氷のように冷たくて、あたしは見下されているように感じた。 「そんなの…」 「あなたは目の前の現実から逃げているだけだわ。理不尽な偶然なんてこの世には存在しない。あるのは、逆らえぬ運命だけよ。」 目を細めた彼女は、そのままあたしから視線を外した。 その表情から、何か苦い物を感じた。 「フラン、無礼な口を謹みなさい。」 アスランが固い声で言い放つ。 フランははっとした顔で跪いた。 「申し訳ございません。」 深く頭を垂れる彼女に、何故か胸が痛くなった。 .
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