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あ、死んだな。直ぐに頭に浮かんだ言葉がこれだ。
そして走馬灯が──って、
「死んでたまるかぁ!!」
叫びながら空中で車に蹴りを放つ。無意味な抵抗のつもりだ。
──ガッシャッン
車のライト部分辺りに俺の蹴りが食い込む。そして、そこを中心に大きく凹み、車がぶっ飛んだ。
「えっ」
周りの人達も唖然としている。勿論、俺も驚いている。まさかこうなるとは、誰も予想できまい。
あ、車は?と思い、見る。
ぶっ飛んだ車はケツから電柱に刺さっていた。
ホッとする。これなら即死ではないだろうからな。
智恵をチラッと見ると、ちゃんと病院に電話している。
俺は恐る恐る車に近付いた。そして、運転席を見る。
無人…だと!?
運転席はもぬけの殻だった。
振り返り智恵に言う。
「お~い、この車無人だぞ」
智恵はそんな馬鹿、と言いたそうな顏で近付いて覗く。
「えっ」
野次馬共もざわざわ言い出す。
警察と救急車が到着して、調査が始まった…が、結局この事件は適当に流された。一般的には、だが…。
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