モノクロ

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    「ハルさん」  そういえば、さっきから私の名前ばっかり言ってる気がする。 「何?」  視聴覚室のカギを閉めながら、彼を見た。  彼は黙ってた。  聞こえなかったのかな? 「何?」  今度は大きめに声を出した。 「なんで俺がハルさんの名前を知ってるのか、気にならないの?」  気になるけど……君から聞いてくるのもなんか変な感じだな。 「気になるよ。教えてくれるの?」  カギを抜いて、モノクロに渡そうと差し出した。  でも彼は受け取ろうとしない。 「美術館に居合わせた事あったんだけど、覚えてないかな?」 「美術館?」 「ハルさん、絵に集中してたから気がつかなかったと思うけど、実は少し話したんだよ?」 「……そうなの?」  彼は急に表情を緩め、照れくさそうに笑った。なんか嬉しそうだなぁ……  って、早くカギを受け取って下さいよ。 「話してて、直接名前も教えてもらったんだよ?」  いや……気を付けろよ私!  いくら絵に集中してたからって、気軽に名前言っちゃ駄目でしょうが! 「モノクロのシンプルな絵だったけど、好きなんだね」 「モノクロ?」    モノクロの絵がある美術館……あっ!  
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