第一章 光の泉

10/30
前へ
/147ページ
次へ
  「いえ、今すぐに」 「ありがと」  一礼し男が去ると、少女は傍のベッドの上にポスンと仰向けに横になった。  それから独り言をぽつりと口にし、あれやこれやと思い描くのだ。 「一国の騎士が亡命、か。そこまでして彼は、一体何を求めているのかしら?」  少女はその思いがなにものであるのか、知らずに日々を過ごしている。ふと瞳を閉じ瞼の裏に映るその姿は、赤茶の髪をした一人の青年の姿なのだ。  そして、決して結ばれることのない二人の物語が、ここに始まるのだ。 「あー、暇!」  
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加