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「どうしたの?」
カシャン────
雨音の中に微かに響いた、ガラス窓が砕け散る音。リュミエールはそれに、すぅ、と視界を開きそして彼を見た。真夜中の戸張を背に、自分の首元に鈍く光る剣先を向ける青年の姿を。
「リュミエール・ド・フォンテーヌ。お前さえいなければ、お前さえ────!!」
濡れた髪から、彼の纏う服から、冷たい雫がぽたりと落ち床を濡らす。それらはすぐにカーペットに吸い込まれ、そこに黒い染みを作っていく。
「私の、お父様の事ね……」
自分の父親の事だ、耳にしたことくらいある。
最近フランス、ローマ、スペインを中心に貴族の殺傷事件が起こっていると。それは今まで、敵国のオーストリアや、今だ外交が不安定なイギリスが関与していると思われていたが、先日、三国の同盟に反対するとある組織が起こしているのではないかと、そう指摘され始めたのだ。
そしてその一人として彼女の父、フォンテーヌ公爵の名があげられていた。その敵討ちとして、娘である彼女が狙われるというのも、有り得ない話ではなかった。
それでも少女に逃げる様子はなく、ただただ無防備で、今も尚ベッドの中で横になるばかりである。
もちろんこの後何が起こるかは知れない。
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