第一章 光の泉

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   けれど、その声には聞き覚えがあったから、忘れることのできないあの声が、耳元に寄り添ってきたから。だから彼女は、そこから離れようとは思わなかったのだ。"彼になら"と、不幸にもそう思ってしまったから。 「それで思いが晴れるなら、私を殺したらいいわ」 「元よりそのつもりで────」  その時、ガァン! と、一際大きな雷が近くに下り、フランス窓をカタカタと震わせた。  全てがこれで終わる、そう確信したはずなのに。復讐劇はこれで終わると、そう信じていたのに。今ここで"光"が訪れなければ、後悔なく全てに幕を引けたはずなのに。  なのに……  
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