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「分かるの。私には、目に映る全ての人の過去、今、そして未来が見えるの。だけど────」
真っ直ぐな瞳を彼に向け、少女はその思いを訴えていた。
父親に言ったところで信じようとはしてくれない。赤の他人に言えば言ったで、その人に見捨てられるのが怖くて、執事の男以外には何一つ言えずにいた事。
もちろん、彼にさえそう深くは言ってはいない。彼女の能力のほんの上辺だけ、伝えてあるのだ。
「自分の未来だけは分からないの」
そんな自分を、彼はどう受け止めてくれるだろうか。嘘吐きな自分を、相手の知られたくない事を知り、自分の醜い部分は隠そうとする自分の事をどう見てくれるだろうか。それがただ、知りたいだけ。
いいや、違う。本当はそんな自分でも、彼に受け入れられたかったのだ。
「こんなことを言って信じてくれる人なんている訳無いけどね、なんだか貴方には、どうしても言っておきたかったの」
だから、かもしれない。彼女はくるりと身を翻し、その細い指で肩紐の端を摘み、解いてゆく。布のこすれる音。スルリと白い肩を滑る白い布。それは腰のところで落ちるのをやめたけれど、彼女の上半身はすでに外気に晒されていて、まさしく一糸纏わぬ姿だった。
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