第一章 光の泉

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   まるで彼に顔を見られないようにと、リュミエールは彼に背を向けたまま、部屋に備え付けられてある茶ダンスの方へ、パタパタと小走りに走り寄って行った。 「おま……」 「それとも、ミルフィーユとアップルティーのセットが良かったかしら?」  その中から小さな青い花柄のマイセン製の皿を取り出し振り返るや否、彼女は口元をそれで隠しながら、いじわるそうな上目遣いでそう問いてきた。 「いや、なんでもいいよ……」 「あら、そう? じゃあ、ジョゼフにモーニングはカモミールを煎れるよう頼んでくるわ」  恐らく、彼が何と言おうとそれを出すつもりだっただろう。彼女はそういう人間なのだ。半日という短い時間一緒にいただけだというのに、ヴェリアーニはそう確信していた。  だのにどうしてか憎めない、我が儘で自分勝手な、そんな彼女の様(さま)に。  それから急ぎ足に、部屋の外へ飛び出して行ったリュミエールだが、 「やっと行っ────」 「あ、そうだ!! それよりベル、今日貴方を連れていきたい場所があるの。来てくれる?」  ────た、と。ヴェリアーニがそう言い終わる前に、バタン!! と扉が激しい音をたて、寒暖入り混じったその部屋に、小さな天使が舞い戻ってきた。 「分かったからさっさと行ってこい」  
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