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「うん。名前は分からないけど、死後の世界に通じる泉、なんてね。ある一つの伝説によれば、ここで天使と英雄が出会ったって、そう言われてるわ」
男女の恋愛と、或いは戦友同士の絆の話ならば、神話の中に盛り込まれることは多々ある。
しかし、それの殆どは神と人間、そして人間同士のものが多く、天使と英雄の恋愛話は余り聞かないのが現実。
何故なら天使は、神が直接創造した完全な存在なのだから、情というものは無いはずなのだから。
例えばキリスト教神話のルシフェルの様に情に流された天使は、神から離れた場所へと追放されそして、束縛されるのだ。
もっとも、その話が真だとはヴェリアーニは少しも思っていなかったのだけれど。
「天使なんかいる訳ねぇだろ」
「本当にそう思う?」
妖しい笑みで、ままに返す少女。その瞳は何を語っているのだろうか。ヴェリアーニも、その碧を見つめていると徐々に焦りが募り、流石にこう聞き返す以外術が見つからなかった。
「なんだよ、その自信ありげな反応は……え、うそ、まさか────」
「いや、ないから。見たことも感じたことも」
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