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急に足を止めたリュミエールが、小さな声で口火を切った。それに二、三歩遅れ、ヴェリアーニもまたその歩みを止めた。
「きったねぇ家だな」
土色の屋根を除いて、その殆どが白に覆われた小さな古めかしい洋館。外壁に纏わり付く茨も相まってか、その古ぼけた外観をより一層に高めている。
それを見たヴェリアーニがポツリと、止まるや否そう言葉を漏らしたのだ。
「む、失礼ね。こう見えてこのお屋敷、うちの別荘なんだから」
丸く切り取られた空から降り注いでいた陽光は、今や雲に陰り、天上はすぐにでも泣きだしそうな雰囲気が漂っていた。
「茨に抱かれた姫君、ね。確かにルミにはお似合いだな」
「どこがどんな風に?」
「痛々しいところがとっても」
「また人のこと馬鹿にして!!」
「そうすぐ怒るなって。だからガキって言われんだろ」
「また────!!」
そうしてリュミエールが手を振り上げた拍子、すぐさまそれに反応し、片手を頭上に構えるヴェリアーニ。
「綺麗なものに程棘があるっていうだろ?」
頬を赤らめ膨らませた少女に皆まで言わせることなく、優しげな物腰でそう問い返したヴェリアーニ。
もちろん、彼に向けられたその小さな平手は遅く、そのまま構えられた彼の手に掴まれゆっくりと下げられた。
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