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「今、ベルが思ってること、当ててみよっか?」
一瞬、ヴェリアーニはドキリとした。その言葉により我に返されたのも理由の一つではある。しかし、本当の理由はそこにはなかった。彼女の過去を愁い浸っていたことに気付かれることが、なんとなく気恥ずかしいことだと感じられたからだ。
だから、暫く考えた後、眉間に皺を寄せぶっきら棒に答えた。
「好きにしてくれ」
すると彼女は、「素直じゃないのね」とクスクスと笑った。
「『どうして会ったばっかなのにここまで打ち明けらるのか』、じゃないかしら?」
彼の予想は、的中した。案の定彼女は、彼の一番の疑問を突いてきた。
「そうだな。じゃあ……どうしてなんだ?」
それにしても何故だろうか。自分は一度、ここを訪れたような気がしてならない。
「昔ね……て言っても、そんな何十年も前じゃなくて、十年くらい前の事なんだけど、ベルみたいな人と会ったことあるの、私」
「それでね」と、彼女は続ける。
「一緒に星空を見て、色々と話をしたの。 この辺りは空気が澄んでるから……ほら、見て、ベル。あそこ────」
無邪気に微笑み、それから天井にはめ込まれたガラス板を通して薄暗い青の夜空を仰ぎ、指差した。
その先に瞬く小さな煌めき、一番星だ。
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