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「もう、行きましょう?」
リュミエールが腰を上げると、古ぼけた板の間が小さく、ぴしりと鳴いた。
母が亡くなって以来、ほとんど人が入ることのなかった家だ。相当なガタがきているのだろう。
「星座は?」
彼女の後を追うように立ち上がったヴェリアーニ。
その時だ。彼らが立つことにより舞い上がった誇りが、月明かりに照らされ、それこそ天に散らばる星々のように見えたのだ。
しかし、彼の心が締め付けられた理由は、それだけではなかった。
「ふふっ、ちょっとからかっただけよ、問題ないわ。昔ある人に教えてもらったもの」
口元を緩め、ふわりとドレスを舞わせながら、リュミエールは言った。
幻想的だった。天窓から差し込む月明かりに照らされた彼女は、彼が今まで見てきた女性の中で────いや、彼が見てきた全ての中で何よりも美しく見えた。
空に浮かぶ、あの満月よりも。
そこで彼はようやく気付かされた。彼女に対する憎しみの心が、いつしか愛へと変わっていることに。
しかしそれは、そう簡単に叶うものではなかった。
彼女が先程見られた流れ星に込めた願い。
彼女が初めて恋をした相手であり、初めて話した同年代の男の子へと向けられた言葉だった。
その彼へと送った、心からの言葉。
それは────
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