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「ずっと――じゃなくて!」
バッと乱暴にドアを開け、尊がずかずか入って来る。
「クロトを連れ歩いたりして、クロトに何かあったらどうするの!?」
まったくもう、と怒る尊を、シュンとしつつも和泉は上目遣いに窺う。
が尊よ!
覗きは犯罪だぞ?
「良いの! 俺といっちゃんは、お風呂だって一緒に入る仲なんだから!」
『親しき仲にも礼儀あり』と言うな?
「俺の事より、クロトの事でしょ!?」
キーと喚く尊の口を、和泉の肩に乗ったクロトがピタリと前足で押さえた。
「あのね? クロトが、怒んないでって。 恐竜に会いたいって言ったの、オイラだからって」
「……」
尊、暫し無言。
軈て、溜め息ついてクロトの小さな前足を、そっと外す。
「今度出かける時は、俺にも言ってね? 一緒に楽しもうよ」
うん、と和泉とクロトは頷く。
「皆がお菓子とか色々買って来たから、食べようって! クロトも一緒に!」
笑って差し出された尊の掌に、しゅたんとクロトが移動する。
女装姿のままの尊とクロトを追う様に、和泉も自室を後にした。
明るい笑い声が、聞こえてくる。
良かったね?
by 作者
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