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「そう言えば」
と、笑いを引っ込めて、真澄は言う。
「何で今日は、『双子の妖精』にならなかったの?」
『双子の妖精』
タケと和泉の、芸名だ。
何を血迷ったか可愛い弟とその親友は、女装して、モデルとしてデビューした。
『金と銀の妖精』、『双子の天使』とも呼ばれている2人は、ちょっとした人気者になっていた。
しかもこの2人、出掛ける時も当たり前の様に、女装して行く様になった。
それをまた和泉の叔父さんが、煽る様に楽しそうに2人を着飾るもんだから、2人を連れ歩く連中もそりゃもう楽し気で。
いやもう、つい俺まで、2人を連れ歩いてしまった程だ。
実の弟とその親友とわかっていても、可愛いもんは可愛い。
連れ歩いて見せびらかしたくなったって、当然だ。
父さんの『タケと和泉が異常に可愛い』病が、どうやら感染した様だ。
元々可愛いかったが、輪を掛けた。
……つい取り乱してしまった。
「あのね」
ふと、和泉が口を開く。
「今日は、普通に楽しみたかったの。 だからたけちゃんにお願いして、普段の俺達で参加したんだ」
にっこり笑う和泉に、そうかと真澄は返した。
普通、ね?
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