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まるで、餌を待つ雛鳥の様なタケの口に、和泉は赤い何かをそっと入れた。
ニッと笑って、タケももごもご口を動かす。
なんだ、餌を与えてるだけ……じゃないだろ!?
まったく、本当に呆れ返る。
「和泉、車内で食べさせるな、迷惑だろ?」
そう俺が言うと、和泉はにっこり笑う。
「食べさせておいた方が大人しくなって、周りに迷惑掛けないよ?」
確かに。
何を与えたか知らないが、もごもご口を動かす4人は、異常な程に大人しい。
最もロックは、正座をやめてちゃんと座った和泉の膝に、ご機嫌で座っているから大人しいのかも知れないが。
「ねぇねぇ、何をあげたの?」
俺も欲しいなぁと呟く真澄に、和泉は赤い何かを手渡した。
「何、これ?」
「一口いちご饅頭」
笑って答える和泉に、他のメンバーも詰め寄る。
和泉は皆に、赤い饅頭を配り出し――兄さん!
何やってんだ、あんたまで!
兄さんはちゃっかり饅頭を受け取り、パクリと一口で食べた。
……
「和泉、俺にも」
催促すれば、
「はい♪」
にこやかに、赤い饅頭を渡してくれた。
苺の形をした可愛い饅頭が、手の上にちょこりと載っている。
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