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一口いちご饅頭は人数分しかない様で、おかわりを要求したロックに、
「もう終わり」
ロックの口の周りを拭きながら、和泉は困った顔してそう言った。
「無いのー?」
和泉の膝にぐりぐり頬擦りしながら、ロックは悲しげな声を発した。
俺の指示を少し勘違いして受け取った和泉は、すっかりロックの保護者気分らしく、
「もう、しょうがないなぁ」
そう言いながらがさごそとリュックを漁り、期待に目を輝かせているロックの前に、可愛らしい某ネズミ柄の小袋を差し出す。
そして自分の隣の空席を、ポンポンと叩く。
「大人しく座ってから、だよ?」
小袋を受け取ったロックは、ぴょんっと座席に腰を下ろす。
ガサッと小袋の口を開け、中を覗き込んだロックの美少年顔に、眩しまでの笑みが浮かぶ。
「「だから、ロックだけなんて、狡い!」」
再び上がる巨大な猛獣二頭の抗議の声に、仕方なさそうに和泉は、リュックから小袋をがさりと取り出し、皆に配り始めた。
「10時のおやつだったのになぁ」
そんな和泉のぼやきは、全員に黙殺された。
小袋の中身は様々な木の実の、キャラメルでコーティングされたキャンディーだった。
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