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が、
「何処へ行く?」
伊織に襟首掴まれ、和泉は呼び止められた。
「えっ? 動物園」
和泉の答えに、伊織は溜め息をつく。
「そっちは売店だ」
「あれ?」
「いっちゃんいっちゃん、動物園はこっち!」
案内図片手に、尊が真逆の方向を指差す。
「ありゃ、こりゃ参ったね?」
とか何とか言いながら、ロックの手を引いて歩き出す和泉を、今度はコウが静止した。
「いっちゃん、だから、方向が違うって!」
何故だ、和泉!?
タケが態々指差しているのに、何故違う方向に向かう!?
「失敗失敗!」
えへっと引き攣った笑いを浮かべる和泉の空いている手を、
「もう、本当にいっちゃんは!」
そう言いながらタケは握り、歩き出す。
「和泉は、方向音痴なのか?」
後に続く李杜が、和泉と和泉に繋がるロックごと引っ張るタケに、そう訊いた。
「いっちゃんのは方向音痴じゃなくて、方向無頼なの」
方向無頼?
なんだ、その造語は?
「いっちゃんは、方角に対して無頼漢なの。 好き勝手に進みたがるの」
方角にならず者?
それって方角音痴より、酷いんじゃないか?
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