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余談ではあるが、体育館は西と東に2つづつ存在し、グランドはない。
体育祭をする時は、市内の運動競技場のトラックを貸し切って行われる。
超が付く程の金持ち校ではないにしてもそこは私立校、県立学校に通うものから見ればこの学校に通う生徒は坊ちゃんやお嬢様に見えるだろう。
笈川れな(おいかわ)は声楽科を専攻している中等部2年、掲示板に群がる人の垣根のその奥にあるのは校内新聞、れなは通り過ぎならがそれらを視界の片隅で捕らえる。
記事の内容まではよく見えない。
れなには見える必要はなかった。
『すご-い』
『ああ。やっぱりね。』
『親が親だもんな。』
『ここ稀に見る天才バイオリニストだからな。』
『教師の皆さん大喜び!』
こんな囁き声だってれなには必要ない。
そんなものなくったって、校内新聞の一面はあの人しかいないのをれなは知っているのだ。
と言うか、この学校の生徒なら知っていて当たり前なのだ。
天才バイオリニスト、加賀 由希(かがなおき)を知らない方がはっきり言ってどうかしている。
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