第一章

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 ぐらりと目の前が傾ぐ。  話の内容が、理解できない。 「どの程度力を受け継いでいるか定かではないが、お前にもブランの務めを果たしてもらうぞ」 「な、にを……」  ミシェールは喘いだ。  だが、絵空事のような彼の言葉を、否定することもできない。 「お前の噂を聞いたし、調査もしている。未だに昨日のことのように語られていたぞ」  くつくつと、楽しげな笑い声が耳に届く。 「知るはずのない過去のこと、先に起こることを絵とする。視 み えるのだろう、お前にも?」  必死で首を振りながら後ずさったが、黒衣の青年はすぐに追ってきて彼の細い腕を強く掴んだ。 「目を逸らすのはやめるんだな。私はお前の力を否定も迫害もしない。存分に描かせてやろう」  強ばった背中に、何かが触れる。手だ。  冷たく整った美貌が、ぐいと近づけられる。  息が出来ない。 「今日から、お前を従者とする。必要な知識を蓄えろ」  喉に、指がかかる。 「できなければ……命はないものと思え」  身体から、熱という熱が奪われる。  肌に指が食い込んできて、目の前が真っ暗になった。  足が震えて、立っていられない。  放り出されて、床にへたり込んだミシェールは、きつく己の身体を抱きしめた。  怖い。  彼は、本気だ。
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