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ぐらりと目の前が傾ぐ。
話の内容が、理解できない。
「どの程度力を受け継いでいるか定かではないが、お前にもブランの務めを果たしてもらうぞ」
「な、にを……」
ミシェールは喘いだ。
だが、絵空事のような彼の言葉を、否定することもできない。
「お前の噂を聞いたし、調査もしている。未だに昨日のことのように語られていたぞ」
くつくつと、楽しげな笑い声が耳に届く。
「知るはずのない過去のこと、先に起こることを絵とする。視
み
えるのだろう、お前にも?」
必死で首を振りながら後ずさったが、黒衣の青年はすぐに追ってきて彼の細い腕を強く掴んだ。
「目を逸らすのはやめるんだな。私はお前の力を否定も迫害もしない。存分に描かせてやろう」
強ばった背中に、何かが触れる。手だ。
冷たく整った美貌が、ぐいと近づけられる。
息が出来ない。
「今日から、お前を従者とする。必要な知識を蓄えろ」
喉に、指がかかる。
「できなければ……命はないものと思え」
身体から、熱という熱が奪われる。
肌に指が食い込んできて、目の前が真っ暗になった。
足が震えて、立っていられない。
放り出されて、床にへたり込んだミシェールは、きつく己の身体を抱きしめた。
怖い。
彼は、本気だ。
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