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「お前、今の現状を分かってなおも、この私をバカにしているのか?」
リーダーの男は鞘から刀を抜き、ピエロの男に突きつけた。
それにならって後ろにいる仲間たちも皆、刀を取り構えた。
「いえ、違いますよ。私はあるお方からあなた達に届け物を頼まれ、此処に来たのです」
そう言って、懐から四角い包みを取り出した。
「……あるお方?まさか!」
「えぇ、そうです、そのまさかです」
あるお方と聞いただけで過剰に反応したリーダーは、仲間たちに刀を下げるように指示し、警戒することなくその包みを受け取った。
ピエロの男が密かに口角を上げていたのを知らずに……
「……では、私はこれで失礼いたします。
さっきの話は決して他言しませんので、ご安心を」
「あぁ!!お主には悪いことをしたな……すまない」
「いえ、お気になさらず。では良い夢を…
「あぁ、ありがとう」
そう言って、ピエロの男は部屋から出て行った。
出て行く時に、
・・
「永遠に」
と、いう言葉を残して…
しかし、その声は男たちには届くことはなかった。
ピエロの男はその後、長屋から出てしばらく歩いていたが、途中でふと足を止めた。
「クスクス……バカな人たちですね。
自分たちの知っている、あるお方からだと勘違いして。
さて、今夜の仕事も終わった事ですし…‥帰りますか」
そうしてまた、足を進め黒い闇の中へと姿を消した。
次の日、あの長屋の一室に居た者たち全員が死体で発見された。
妖しげに笑うピエロの絵と共に………‥
*
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