私ともう一人の私

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「ひゃあああああ!」 朝の7時。 脱衣所で全裸になって体重計に乗る。 それが私の日課であり、1日を始める儀式だった。 「なんで…なんでよ。昨日は0.4キロ減ったのに、なんで今日は0.6キロも太ってるの!」 ムンクの叫びという絵画をご存知だろうか。 人間、あまりに絶望するとあのような絵の格好になる。 私は両手で顔を挟み、絶望を感じていた。 それは何故か。 つい先日、親友のくみっちに体重をチェックされ、それ以上増えたら友達をやめると言われたのだ。 彼女はいじわるをしてそう言っているのではない。 急激な体重増加で変貌してしまった私の体を心配しているのだ。 「いい?友絵。元々痩せてたんだから、急激に太ったら病気になりやすいの。だから言うのよ」 私も好きで太ったわけではない。 発作を抑える為に飲む薬があるのだが、それを飲むと非常に咽が乾くのだ。 ペットボトル五本分を毎日飲む私に主治医は言った。 「水ではなくポカリにしましょう。1日一本を目安に。飲んだという満足感と満腹感を与えましょう」 ※ペットボトルは大きいペットボトルである 私は主治医に従い一年近くその生活を続けた。 すると、見る見るうちに体重が増加。 何をしても太る。 食べなくても太る。 しまいには、立ったり座ったりする事も出来ずになり、寝たきり生活になったのである。 勿論、筋力は落ちる。 悪循環だ。 思い切って親友に相談すると、彼女は絶句した。 「それってペットボトル症候群って言うんだよ。スポーツ選手でも1ヶ月毎日飲み続けたら元の体に戻すのが難しいの。ポカリって糖分が沢山入ってるのはわかるよね?寝たきりの病人がそれだけ飲めば、糖分を過剰に摂取しやすい体になるから、そりゃ太るわ」 ファック!ヤブ医者め! というわけで、親友くみっちの指導のもとに私のダイエットが始まったのであった。 私が痩せたい理由は他にもあった。 やはり好きな人には綺麗な自分を見ていて欲しい。 恋する女性なら誰しも思う事である。 『叫び声が聞こえたが、どうした?』 「ぎゃああ!颯!こないで!見ないで!近寄らないで!」 『…え…何故だ。俺が…イヤなのか?』 颯のショックと戸惑いと悲しみの波長が入り混じって、私に流れ込んでくる。 「だから…イヤとかじゃなく…」 『……友絵、俺は』 「体重が増えたから見られたくないのよ」
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