関係

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瑚渡の叫び声に、 俺の名前を呼ぶ声に、 弾かれたように靴を脱ぎ捨て、瑚渡の元に向かった。 「瑚渡!!」 目の前には瑚渡に馬乗りになっている男の姿。 瑚渡の服は乱れていて、瑚渡の目には涙が浮かんでいる。 俺を見据えた男は、俺の胸倉を掴み、 「てめぇが瑚渡に手ぇ出しやがったのか?あぁ?」 と、唸った。 「煢(ケイ)止めて!!」 瑚渡に煢と呼ばれた男は、掴んでいた服を離し、 「もうそんなにコイツに惚れたのかよ?」 と、寂しい瞳をして言った。 直感で、煢というこの男はきっと。瑚渡を愛しているんだと分かった。 「煢・・?」 俺の事を好きと言わずに、煢という男の名前を呼んだ瑚渡に腹が立つ。 「瑚渡、愛してる」 優しく瑚渡を抱きしめ瑚渡の耳元で囁く、煢。 「瑚渡を離せ」 気付けば声が口をついて出ていた。 「てめぇは帰れ!邪魔なんだよ!」 血相を変え、俺にキレる煢。 「瑚渡は俺の女だ」 そう言うと、俺に向かって煢の拳が飛んで来た。 かわす事が出来ず、頬に痛みが走る。 「くっ・・」 血の味がする。 「翔胡!!」 瑚渡の声に立ち上がる。 「ふざけんな」 流石に、俺もキレて、煢を殴った。 「やめて!!」 瑚渡の声が聞こえる。 お互いに、手は止まらない。 ━ドンっ━ 床に突っ伏す煢。 起き上がることをしない。 「ハッ、お前強ぇな」 言葉を吐き捨てる煢。 「そんなに瑚渡が好きなら幸せにしてやってくれ」 いきなりの展開に驚きを隠せない。
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