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逆光か明るさの関係か、はっきりと姿は判らないが、 ともかくその人は、ずっと何かを語りかけていた。 こちらを見て、おそらくは微笑んでいるであろう表情。 不意に物悲しさを覚えて、思わず手を伸ばす。 (…誰?) 「エア…待っているから」 (待って、) 「ずっと…待っているわ」 待つと言う言葉に反して、その人影はどんどん遠く、薄れていく。 待って、待って。そう願いながら手を伸ばす。 消えていくその人と、とても大事な話があった気がした。 切に願いながら待ってと言おうとしても、 困ったことにどうしてか声は出てこない。 人影は光と共に、見えそうにないぐらいに消えかかっていた。
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