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(お願い、待って…)
自分の口が一際大きくはくりと開く。
言葉を発するための空気が喉になだれ込んで、
思わず噎せそうになった。
赤ん坊が初めて呼吸をするとき、きっとこんな感じだと、
どこか頭の隅っこで考えながら、
声帯がちゃんと震えたのを感じた。
「待って!!」
「うわっ」
「…あれ?ってか眩し…」
途端に明るさを増した世界。
上から降る光を遮るように手を目の上へ持っていく。
敬礼みたいだなんて考えていたら、目の端に何かが映った。
「…おはようございます」
「あ、うん…おはよー…?」
いきなり叫んだであろう自分から少し距離をとった何か。
もとい、少年…少女かもしれないが、
とにかく、その子は明らかにこちらをいぶかしむ風で、
「寝覚めは最高みたいですね」なんて呟いていた。
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