一章

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 いきなりやってきていきなり去っていった多田先生を見送ってから約一時間が経過した頃、学校中に配置している式の一つの気配が無くなった。……屋上だ。 「あ、ちょっとお花を摘みに行って来るね」 「いってらっしゃい」  ただの人間である桔梗ちゃんは何も気付かなかったようだが、九十九神である直葉ちゃんは何者かの存在を察知したようで。こちらに向けてウインクをしてみせた。 「花か……ボクはスノードロップが好きなのさ。ついでに摘んできてよ!」  直葉ちゃん……もしかしてとは思ったけど、意味を理解していない? なんて苦笑しつつ、教室を出てトイレへ向かう。……と見せかけて進路変更、屋上へ。 「や、雫はそういう意味で言ったんじゃないしスノードロップはそもそも学校には咲いていないわよ」 「マジなのさ!?」 「マジよ」  ……ある理由から急ぐ私は走っていたので、そんなやり取りがあったことを知らない。 「えっと……今なら人はいないし大丈夫かな?」  一階から二階、二階から三階……と駆け抜けて、ふと立ち止まると、現在地は四階と屋上の中間……いわゆる踊り場という所だった。そこから視線を屋上の扉へと向けて意識を目に集中する。
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