一章

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「高橋先輩が事故に遭ったって聞いたんだけど、大丈夫なのかしら」 「さぁ……今度、お見舞いに行ってみようよ」  事故ではなく妖怪関係で、実は既に私はお見舞いに行っていたのだけれど、金髪碧眼の彼女には黙っておくことにする。彼女は怪異が関係する生まれの割りに耐性が無いから。 「そうね、行きましょう」 「ボクも行くよ」  私たちがそんな話をしていた所にある同級生が入ってきた。所々外側にはねている黒髪の少女、睦月 直葉(むつき すぐは)。  ウルフヘアーで活発な印象を与えるのに、目元を長めの前髪で隠していて中々表情がわかりずらい彼女はというと、つい最近転校してきた子で結香先輩とも認識があるのだそうだ……ただし、この姿ではない姿で。  自らをボクと言う彼女は人ではなく、毛羽毛現にして九十九神である。……ちなみに、日本人離れした金髪碧眼のもう一人はというと、狐憑き一族の当主の娘にして神隠しにあった、尾崎 桔梗(おざき ききょう)。 「あ、ねぇねぇ雫。次の教科って何だっけ?」 「次は確か数学だよ。桔梗ちゃんの苦手な」  そう付け加えれば、彼女は顔をしかめてみせて。 「うわ……最悪だわ。私、寝ようかな……」 「こらこら。起きてないと分かるものも分からなくなるよ」  そう言って苦笑する私はというと。人よりも妖怪に近い存在の友人二人を持つ、ただの善良な一般市民……ではなく、まぁそちら側の人間なわけで。  もっと突っ込んで言えば私、西城 雫(さいじょう しずく)は妖怪を退治することを目的とした一族の当主なんだけど。  私たち三人が日常に溶け込んでいるように各国には様々なケースがある。鬼が高校生をやっているとか……いや、これは身近な例だけど。
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