一章

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「こんにちはー……って、誰もいないや」  放課後、オカルト研究会の部室に入ると、必ずいるはずの先輩二人がいなかった。 「あれ、先輩たちはいつも早く来てるのに。どうしたのかしら」  桔梗ちゃんが眉を寄せて腕組みをした横から、部員ではない少女が顔を覗かせる。直葉ちゃんだ。 「お見舞いじゃないのかな? ほら、意識不明な先輩の」  それだけ言って、何の躊躇もなく部屋の中央にあった机に腰掛けた。こら、行儀が悪いぞ……と心の中で突っ込みつつ、私はその前の席へ。 「直葉!? あんた、ついてきてたの?」  入り口に未だ突っ立ったままの桔梗ちゃんは彼女の存在に気付かなかったらしく、真横から聞こえてきていた声に驚いていた。一方の直葉ちゃんはというと。  意図的に気配を隠していたらしく、ドッキリ成功と言わんばかりのニヤケ顔をしていた……口元だけしか見えないんだけれども。 「おうさ! 鈍感な桔梗じゃ気付かなかったみたいだね、しぃは気付いてたでしょ?」 「勿論。相棒の気配に気付かないわけないでしょう」  彼女たちがこの学校に転校してきてから、私たち三人は行動を共にするようになっていた。桔梗ちゃんはまぁ色々と危なっかしかったからで、直葉ちゃんはその稀有さ(毛羽毛現とかけているわけではない)から。  今のところは敵意を感じられず……というか寧ろ好意を感じるのだけど、毛羽毛現であり九十九神でもある直葉ちゃんは、不安定な存在だ。常に警戒しなくては……と思いつつ、直葉ちゃんに目を向けると、瞬時に彼女はこちらを向いてみせた。 「何やら熱い視線を感じたのさ? しぃ、そんなにボクにゾッコン?」 「いや、ゾッコンじゃないし、その表現はかなり古いよ」 「ええ!?」  古いと思わなかったんだ……流石は九十九神。
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