巨人は翔び、天女は謳う。

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チャンス。 私は痛みに悶える聖霊ソルフィに先ほどの恨みとばかりにラッシュを決めていく。 これで、倒れて! 「ぐぅぅう……今まで生きてきてこんな攻撃を食らったのは初めてだ……面白い、面白いよアンタぁ!!」 ダメか……! 聖霊ソルフィもラッシュを放ってくる。 確実に私を倒しにくる拳や蹴りをいなし、避け、弾き、打つ。 聖霊ソルフィも私の攻撃を同じように迎撃する。 そこで私はあることに気づく。 「イイ、イイよ……スゴくイイ!!もっとアタシを悦ばせて!!あはははははははは!!」 歓喜に震える聖霊ソルフィ、先程までは自分と互角に戦える存在がいたことで楽しんでいるのだと思っていたのだが何かが違う気がする。 「ほらほらほら!アンタの拳はそんなものなの!?もっと強く打ち込めないの!!」 そう、これだ。 さっきから何故聖霊ソルフィは私の攻撃を受け止めているの? というか何故魔法や霊術を彼女は使わないの? 体術にこだわる理由は?勝ちたいなら私のラッシュを中断させてトドメを刺せばいいのに何故私のラッシュに正面から激突する? 戦うのが楽しいから?遊びのつもりだから?それだけじゃない、何かあるような……。 戦いの最中に考え事をしていたせいか、 「隙あり!!」 聖霊ソルフィの拳が私の防御をすり抜けた。 「しまっ」 防御は間に合わない、だったら腕を潰す!! ラッシュを中断して左手で突き込まれた右手首を掴み、右肘での肘打ちで聖霊ソルフィの右腕を折る! 私の肘が聖霊ソルフィの二の腕にぶつかる。 肘から骨ではないが、何か硬いものをを砕くような音が伝わる。 そのとき私は気づいた、今まで私が抱いていた疑問の正体が。 「あんっ///」 聖霊ソルフィの顔。 本来ならば攻撃を受け、どんな屈強な人間でも顔をしかめるその痛みに対し、 恍惚の表情を浮かべていたのだ。 その時、私の中の何かに火がついた。
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