終わりを決めた日

4/5
前へ
/10ページ
次へ
「今から治して……」 「…りょうちゃんもいなくなるの?」 「……何言ってんの?」 「りょうちゃん、みよのくるしいのとったら、くるしいになっちゃうでしょ?」 「……」 「くるしいになったら、りょうちゃんママやパパみたいに、いなくなるでしょ?」 「…居なくなるわけねーだろ。」 だから治してって言えよ! 信じろよ! お願いだから望んでくれよ!! 「…みよ、りょうちゃんがくるしいのヤダ。りょうちゃんいなくならなくても、りょうちゃんくるしいなら、みよがくるしいでいい!」 「…っ、」 自分を優先に我儘を言う子供が、他人を思って、自分に痛みがあればいいと言った。 俺が未世の病気を背負って消えることまでお見通しで、自己犠牲の言葉に張り詰めていた糸がプツンと切れるように、怒りという感情が一瞬で抜けた。 独りきりになることより何より、俺が苦しむのが嫌だという一言に…… 「りょうちゃん、いたいの?くるしいの?」 「…え?んなこと、ねぇよ?」 「じゃあ、ないてるの、どうして?」 ナイテル? 泣いてる? 反射的に頬を触れば掌は濡れて、それを感じた瞬間に視界は歪み後から後から涙が零れてきて、嗚咽まで吐き出していて、 病院だって思い出して小さくかみ殺したけど、涙は止まる気配を見せなくて… 悲しいのか、悔しいのか、嬉しいのか、 ただ胸が少し苦しくて、ほんのりと温かくて、 血も何も繋がりのない未世を、 ただただ 愛しく思った。 未だに泣く俺の頭を、時折苦しそうに咳き込みながらも、小さな手で撫でてくれた。 『諒ちゃん、ありがとう。』 不意にアイツの声が聞こえた気がして、また涙が溢れた。 .
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加