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「今から治して……」
「…りょうちゃんもいなくなるの?」
「……何言ってんの?」
「りょうちゃん、みよのくるしいのとったら、くるしいになっちゃうでしょ?」
「……」
「くるしいになったら、りょうちゃんママやパパみたいに、いなくなるでしょ?」
「…居なくなるわけねーだろ。」
だから治してって言えよ!
信じろよ!
お願いだから望んでくれよ!!
「…みよ、りょうちゃんがくるしいのヤダ。りょうちゃんいなくならなくても、りょうちゃんくるしいなら、みよがくるしいでいい!」
「…っ、」
自分を優先に我儘を言う子供が、他人を思って、自分に痛みがあればいいと言った。
俺が未世の病気を背負って消えることまでお見通しで、自己犠牲の言葉に張り詰めていた糸がプツンと切れるように、怒りという感情が一瞬で抜けた。
独りきりになることより何より、俺が苦しむのが嫌だという一言に……
「りょうちゃん、いたいの?くるしいの?」
「…え?んなこと、ねぇよ?」
「じゃあ、ないてるの、どうして?」
ナイテル?
泣いてる?
反射的に頬を触れば掌は濡れて、それを感じた瞬間に視界は歪み後から後から涙が零れてきて、嗚咽まで吐き出していて、
病院だって思い出して小さくかみ殺したけど、涙は止まる気配を見せなくて…
悲しいのか、悔しいのか、嬉しいのか、
ただ胸が少し苦しくて、ほんのりと温かくて、
血も何も繋がりのない未世を、
ただただ
愛しく思った。
未だに泣く俺の頭を、時折苦しそうに咳き込みながらも、小さな手で撫でてくれた。
『諒ちゃん、ありがとう。』
不意にアイツの声が聞こえた気がして、また涙が溢れた。
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