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人混みの中でも、すぐ晴馬を見つけられる。
好きだから…だけじゃなくて、晴馬は目立つ。
特別背が高いわけでもないし、髪色が派手なわけでもない。
何でだろう?雰囲気やオーラが他の人と違う気がする。
「沖田ー」
気軽に呼べるごとちんは、凄いと思う。
まぁ、晴馬を恋愛対象として見てないからだと思うけど。
「おぉ。嘉奈…と後藤じゃん」
あ、今あたしにやけてる。
ごとちんより、先にあたしの存在に気付いてくれたことで、胸が一杯だ。
「なに買うの?」
笑顔で聞くと、あたしを一瞥し、それからそっぽを向く。
「秘密ー」
「なによー、それっ」
一杯になった胸が、今度は切なさが更に積もる。
晴馬の言葉ひとつだけで、舞い上がったり切なくなったりして。
ホントに、振り回されてるよ。あたし。
「まー、後のお楽しみ」
と言い、手のひらを頭にポン、と乗せる。
その手のひらの熱と同じくらい、あたしの頬にも熱が籠もる。
その熱を隠すように、ぎゃあぎゃあ喚いた。
「おだんご崩れるっ!」
「こんな髪型してっから、いっつも待ち合わせ遅れてんだろ?」
「ち、違うし」
実際、ホントのことを言うとその通りだ。
前に、晴馬が言っていた。
“髪結わいた女子の方がタイプ”
だから、あたしは毎日髪を結わいている。
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